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先に結論をお伝えします。
- 亡くなった方が団体信用生命保険(団信)に加入していれば、保険金で残りのローンが完済されるのが原則です。ただし自動では終わりません。相続人が金融機関に届け出て、保険会社の審査(目安1か月程度)を経て完済が決まります
- 団信が無い・対象外のときは、ローンは借金として相続人に引き継がれます。相続放棄・限定承認を選べるのは、原則として相続の開始を知った時から3か月以内です
- 家を売る・預金で返す前に、相続放棄の可能性を確かめてください。相続財産を処分すると、放棄できなくなるおそれがあります
- 返済が止まったまま時間が過ぎると、通常の滞納と同じく競売へ進みます(目安は滞納から10〜12か月)。相続の手続と滞納の期限は、同時に進んでいます
- 今週やることは、①金融機関に死亡を連絡して団信の加入状況を聞く ②届いている通知書と返済予定表を集める、の2つです
親や配偶者が亡くなり、家に住宅ローンが残っていたと分かった。しかも返済が止まっていて、督促の書面が届いている。この記事は、そういう方のために、団信で完済されるかどうかの見分け方と、完済されない場合にいつまでに何を決めるかを順番に整理したものです。
滞納から競売までの全体の流れと月数の目安は、柱記事「住宅ローンを滞納するとどうなる?」にまとめています。ここでは、そこに「名義人が亡くなった」という事情が重なったときの話をします。
最初の分かれ道:団信で完済されるか
住宅ローンを組むとき、多くの場合は団体信用生命保険に加入します。借りた人が亡くなると、保険金が金融機関に支払われ、残りのローンに充てられる仕組みです。ただし、加入が任意の商品もあり、全員が入っているとは限りません。まず次のどれに当たるかを確かめます。
| 状況 | ローンはどうなるか | 相続人がすること |
|---|---|---|
| 団信に加入していた | 保険金で完済されるのが原則 | 金融機関に連絡し、弁済の届出と死亡診断書などを出す |
| 団信に加入していなかった | 借金として相続される | 相続するか放棄するかを3か月以内に決める。相続するなら返済を続けるか、売って返すか |
| 連帯債務・ペアローンで、団信が亡くなった方の分だけ | 亡くなった方の分は完済されうるが、生きている側の分は残る | どの範囲が完済されたかを金融機関に確認する |
| 加入していたが、生前に滞納があった | 扱いは約款と金融機関の判断による | 自己判断せず、すぐに金融機関へ確認する |
※団信の内容は金融機関・商品・加入時期によって異なります。【フラット35】の場合の手続は住宅金融支援機構「ご本人がなくなられたとき」に案内があります。ご自身の扱いは、金銭消費貸借契約書と団信の加入書類、そして金融機関への確認で判断してください。
加入状況が分からない場合は、融資を受けた金融機関に連絡すれば確認できます。住宅金融支援機構の案内でも、まず取扱金融機関に連絡するよう示されています。
期限の表:いつまでに何を決めるか
名義人が亡くなった直後は、葬儀や役所の手続で手一杯になりがちです。けれども住宅ローンについては、次の期限が同時に進んでいます。
| 時期の目安 | やること・起きること | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| 亡くなってすぐ | 金融機関に連絡し、団信の加入状況と必要書類を聞く | 完済が決まるまでは、返済を求められるのが一般的 |
| 届出から1か月程度 | 保険会社の審査、完済の決定 | 審査期間は保険会社・事案により前後する |
| 相続の開始を知った時から3か月以内 | 相続放棄・限定承認をするかを決める | 民法第915条。家庭裁判所に申し立てれば延長が認められる場合がある |
| 10〜12か月(滞納の開始から) | 返済が止まったままなら、競売の入札開始に至りうる | 通常の滞納と同じ流れ。金融機関・裁判所により前後する |
| 支払事由の発生から3年 | 団信の保険金を請求する権利が時効にかかりうる | 保険法第95条。放置すると完済されないおそれがある |
| 取得を知った日から3年以内 | 相続登記の申請 | 2024年4月1日から義務。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象 |
※期間はいずれも目安です。相続放棄の手続は裁判所「相続の放棄の申述」、相続登記の義務化は法務省の案内で確認できます。2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、その場合の期限は2027年3月31日までとされています。
この表でいちばん短いのは3か月です。団信の結果を待っているうちに過ぎてしまうことがあるので、結果がすぐに出ないときは、期間の延長(伸長)の申立てができるかを弁護士・司法書士に相談してください。
返済が苦しくなった家の売却は、当サイト運営の城久株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号/取引態様:当社が買主となる売買(直接買取)または媒介)がご相談をお受けしています。事情のある家も、まずご相談ください。売却について相談する(お電話 03-6824-4499/受付 10:00〜18:00)
団信で完済される場合:やることと費用
団信で完済されれば、住宅ローンの返済は終わります。それでも、家の名義と抵当権の登記は自動では変わりません。残る手続は次のとおりです。
- 団信の弁済届と死亡診断書などを出す。用紙は金融機関で受け取ります。審査が終わるまで、返済の扱いを金融機関に確認しておきます
- 完済後の書類を受け取る。抵当権を外すための書類が、金融機関から相続人の代表者などに渡されます
- 相続登記をする。家の名義を相続人に移します。登録免許税は、原則として固定資産税評価額の1000分の4です
- 抵当権の抹消登記をする。登録免許税は不動産1個につき1,000円です
登記を司法書士に頼む場合は、別に報酬がかかります。金額は事務所によって異なるため、見積もりで確認してください。相続登記の進め方は姉妹サイトの相続の味方:相続した不動産の名義変更(相続登記)が義務化で詳しく扱っています。
完済された家は、そのまま住むことも、売ることもできます。売るときは相続登記を先に済ませる必要があります。
団信が無い・下りない場合:選べる3つの道
団信で完済されないとき、ローンは他の借金と同じく相続の対象になります。選べる道は大きく3つです。
① 相続して返済を続ける
家に住み続けたい場合の道です。【フラット35】では、相続人が複数いる場合は返済能力のある法定相続人1人が引き継ぐよう求められ、金融機関に「相続届」を出す流れが案内されています。収入が足りず返済が続かない見込みなら、早めに別の道と比べてください。
② 相続して家を売り、売却代金で返す
売却額が残債を上回れば、売って完済し、残りを相続人で分けられます。売却額が残債に届かない場合(オーバーローン)は、債権者の同意を得て売る任意売却を検討することになります。手順は「オーバーローンで家が売れない?」、売り方の違いは「任意売却と買取の違い」で整理しています。
③ 相続放棄をする(または限定承認)
借金が財産より多いなら、相続放棄を選べます。放棄した人は、初めから相続人でなかったものとみなされ(民法第939条)、家もローンも引き継ぎません。家庭裁判所への申述が必要で、費用は申述人1人につき収入印紙800円と、裁判所ごとに異なる郵便料です。財産の範囲内でだけ借金を引き継ぐ限定承認もありますが、相続人が複数いるときは全員で共同して行う必要があります(民法第923条)。
放棄すると、相続の権利は次の順位の人(亡くなった方の親や兄弟姉妹など)に移ります。家族に事情を伝えずに放棄すると、親族のもとに突然請求が届くことがあります。また、放棄の時に家を現に占有していれば、引き渡すまで保存する義務が残ります(民法第940条)。放棄するかどうかの考え方は相続の味方:いらない不動産、相続放棄すべき?も参考になります。
「長男がローンを引き継ぐ」と決めても、債権者には効かない
遺産分割協議で「家とローンは長男が引き継ぐ」と決めても、それは相続人どうしの取り決めです。債権者は、法定相続分に応じて各相続人に請求できます(民法第902条の2)。債権者がその分け方を承認すれば別ですが、承認がないうちは、家を引き継がなかった相続人にも請求が来る可能性があります。
滞納していた・しそうなときの順番
名義人の生前から返済が止まっていた場合や、亡くなった後に引き落としが止まった場合は、相続の手続と滞納の期限を並べて考えます。次の順番で進めると、時間を無駄にしにくくなります。
| 順番 | やること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 1 | 金融機関に死亡を連絡し、団信の加入と滞納の状況を聞く | 通知が亡くなった方の住所に届いていて、誰も読んでいないことがある |
| 2 | 届いた書面を日付順に並べ、今の段階を確かめる | 書面の意味は「催告書と督促状の違い」「代位弁済通知が届いたら?」 |
| 3 | 財産と借金の全体を把握する(家の価値・残債・他の借入) | 住宅ローン以外の借入が後から見つかることもある |
| 4 | 3か月以内に、相続するか放棄するかを決める | 迷う場合は、期限の前に伸長の申立てを相談する |
| 5 | 相続するなら相続登記をし、返済を続けるか売るかを決める | 登記が済むまで売買契約の手続は進められない |
| 期限 | 競売手続が始まっていれば、開札期日の前日まで | 実務では手続の時間を見込み、さらに前倒しが必要。「競売開始決定通知が届いたら?」 |
※期間は目安で、金融機関・裁判所により前後します。ご自身の期限は、届いた書面の日付と内容で確認してください。
つまずきやすい点
・放棄するかもしれないのに家を売る・解体する・預金から返済すると、相続財産の処分にあたり、単純承認したとみなされるおそれがある(民法第921条)。動く前に専門家へ確認する
・団信の結果を待つうちに、相続放棄の3か月が過ぎてしまう
・団信の保険金は請求しないと支払われない。請求の権利には3年の時効がある
・兄弟姉妹で家を共有して相続すると、売るときに全員の同意が要る(相続の味方:兄弟・複数人で相続した不動産の売り方)
相談先の切り分け
相続放棄・借金・債権者とのやりとり → 弁護士・司法書士
相続放棄や限定承認の申述、期間の伸長、相続人どうしの遺産分割、債権者との返済条件や減額の交渉、自己破産・個人再生の検討。これらは弁護士・司法書士の業務です。不動産会社の業務ではありません(司法書士は扱える範囲に制限があります)。相続登記は司法書士に頼めます。費用が心配な場合は、法テラスの民事法律扶助で、収入と資産の基準を満たせば無料の法律相談や費用の立替えを受けられる場合があります。専門家は日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会から探せます。
団信の加入状況・完済の手続 → 融資を受けた金融機関
家がいくらで、いつ売れるか → 宅地建物取引業者(不動産会社)
相続するか放棄するかを決めるには、家がいくらで売れるかという数字が要ります。弁護士・司法書士への相談と、家の価格の確認は、同時に進めて構いません。
今日できること
- 融資を受けた金融機関に、名義人が亡くなったことを連絡する。団信の加入状況、滞納の有無、必要書類を聞きます
- 亡くなった方あての郵便物を開けて、通知書と返済予定表を集める。督促状・催告書・代位弁済通知が届いていないかを確かめます
- 相続の開始を知った日をメモしておく。3か月の期限はここから数えます
- 家がいくらで売れるかを把握する。残債との差で、相続するか放棄するかの判断が変わります
- 団信で完済されない見込みなら、弁護士・司法書士に相談する。家を売る・片付けるのは、方針が決まってからにします
相続と滞納が重なると、やることの多さに目が向きがちです。けれども、最初に確かめるのは「団信で完済されるか」の1点だけです。そこが分かれば、残りの期限と順番は自然に決まります。
よくある質問
Q. 団信に入っていれば、何もしなくてもローンは消えますか?
消えません。相続人が金融機関に届け出て、保険会社の審査を経て完済が決まります。完済が決まるまでは返済を求められるのが一般的です。保険金を請求する権利には3年の時効があるため、早めに手続してください。
Q. 親が生前に滞納していました。団信は使えますか?
生前の滞納がある場合の扱いは、約款と金融機関の判断によります。一律には言えないため、まず金融機関に死亡を連絡し、団信の対象になるかを確認してください。
Q. 家だけ相続して、ローンは放棄できますか?
できません。相続放棄は財産も借金もまとめて引き継がない制度です。財産の範囲内でだけ借金を引き継ぐ限定承認という方法はありますが、相続人全員で行う必要があります。
Q. 相続放棄をすれば、住んでいる家からすぐ出なければいけませんか?
放棄すると家は自分のものではなくなりますが、放棄の時に家を現に占有していれば、次の相続人などに引き渡すまで保存する義務があります。退去の時期や段取りは、弁護士・司法書士に相談しながら決めてください。
Q. 団信が無く、売っても残債が残ります。どうすればいいですか?
相続するか放棄するかを、3か月以内に決めるのが先です。相続する場合は、債権者の同意を得て売る任意売却を検討することになります。どちらが有利かは財産と借金の全体で決まるため、家の価格を確かめたうえで弁護士・司法書士に相談してください。
この記事について:滞納の味方 編集部(城久株式会社/宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号)が作成しています。
債務整理・債権者との交渉は弁護士・司法書士にご相談ください。 最終更新日:2026年11月5日
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