任意売却と買取の違いとは?──どっちを選ぶかは「販売活動の期間」で決まる

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先に結論をお伝えします。

  • 任意売却と買取は、同じものさしで比べる言葉ではありません。任意売却は「債権者の同意を得て売る」という手続の枠組み、買取は「不動産会社が自ら買主になる」という買主の種類です
  • 実務で比べるべき違いは1つです。買主を探す販売活動の期間があるか、ないか。媒介(仲介)で市場に出せば販売活動の期間が必要になり、買取ならその期間がかかりません
  • だから選び方は、残り時間と価格の差のどちらを優先するかで決まります。時間があるうちは媒介で市場に出す方が高く売れやすく、時間が足りないときは買取が候補に残ります
  • 注意点として、残債が売却額を上回る場合は買取でも債権者の同意が必要です。債権者によっては、一定期間の販売活動を同意の条件にしていることがあります
  • 今週やることは、①届いた通知で今の段階を確かめる ②残債を確かめる ③「媒介での査定額」と「買取の提示額」を並べる、の3つです

住宅ローンの滞納について調べると、「任意売却」と「買取」がよく並べて出てきます。どちらが得か、という比べ方をされがちですが、この2つはそもそも答えている問いが違います。違いを取り違えると、選べるはずの方法を時間切れで失うことがあります。

この記事では、2つの言葉の意味を分けたうえで、販売活動の期間・費用・手続の順番・つまずきやすい点を、法令と公的機関の資料にそって整理します。滞納から競売までの全体の流れは柱記事「住宅ローンを滞納するとどうなる?」に、月数の目安つきでまとめています。

2つの言葉は、答えている問いが違う

任意売却は、「抵当権が付いた家を、全額は返せないまま、どうやって売るか」という問いへの答えです。抵当権は債権の全部の弁済を受けるまで残るため(民法第372条で第296条を準用)、残債より安く売るには債権者が抵当権の抹消に同意することが条件になります。この仕組みは「オーバーローンで家が売れない?」で条文から説明しています。

買取は、「誰が買うのか」という問いへの答えです。一般の個人を探すのではなく、宅地建物取引業者(不動産会社)が自ら買主になります。

つまり2つは組み合わせることができます。整理すると次の3通りです。

売り方 買主 債権者の同意 販売活動の期間
任意売却(媒介で市場に出す) 一般の個人など 必要 必要
任意売却(不動産会社が買主) 不動産会社 必要 原則不要(債権者の条件による)
通常の売却・買取(残債を売却代金で完済できる) 個人または不動産会社 抹消のための同意は不要(完済で抹消) 媒介なら必要/買取なら不要

滞納している方の多くは、残債が売却額を上回るか、ほぼ同じです。その場合、買取を選んでも債権者の同意という工程は省けません。省けるのは「買主を探す期間」だけです。

本当の違いは「販売活動の期間」があるかどうか

媒介で売る場合、買主が現れるまでの時間は誰にも決められません。柱記事で示したとおり、任意売却の販売活動にはおおむね6〜11か月かかることがあり、一方で滞納から競売の入札開始まではおおむね10〜12か月です(いずれも目安で、金融機関・裁判所・物件により前後します)。

媒介の期間には法律の枠もあります。宅地建物取引業法は、専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができないと定め、更新しても更新の時から3か月が上限です(宅地建物取引業法第34条の2第3項・第4項)。業者は業務の処理状況を2週間に1回以上(専属専任媒介なら1週間に1回以上)依頼者に報告しなければなりません(同条第9項)。3か月ごとに、価格や依頼先を見直す節目が来ると考えてください。

そして競売の側の期限は動きません。入札があった後に申立てを取り下げるには入札した人の同意が必要になるため(民事執行法第76条第1項)、実務上は開札期日の前日が区切りとされています。ただしこれは法律上の限界で、債権者の審査や書類の準備を考えると、実際に動ける期限はもっと手前です。

残り時間で考える目安

・督促状の段階(残りに余裕がある)→ まず返済条件の変更の相談。売るなら媒介で市場に出す時間がある
・催告書〜代位弁済の段階 → 媒介の販売期間が確保できるかを、競売までの残りと引き算して判断
・競売開始決定が届いた段階 → 販売期間が足りない可能性が高く、買取も含めて比較する段階

自分の段階は「催告書と督促状の違い」「代位弁済通知が届いたら?」「競売開始決定通知が届いたら?」で確かめられます。

返済が苦しくなった家の売却は、当サイト運営の城久株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号/取引態様:当社が買主となる売買(直接買取)または媒介)がご相談をお受けしています。事情のある家も、まずご相談ください。売却について相談する(お電話 03-6824-4499/受付 10:00〜18:00)

価格と費用の違い

価格は、一般に媒介で市場に出す方が高くなりやすく、買取は低くなりやすいとされます。買取では、不動産会社が転売までの期間や改修の費用、売れ残りの危険を自ら負うためです。どの程度の差になるかは物件と会社によって大きく違うので、一般論の割合ではなく、実際の数字を並べて判断してください。なお、競売は制度上、売却基準価額の8割にあたる買受可能価額から入札できる仕組みで(民事執行法第60条)、どちらの売り方よりも価格を自分で選べない方法です。

費用の違いは仲介手数料です。宅地建物取引業者が媒介で受け取れる報酬には上限があり(宅地建物取引業法第46条)、売買価格が400万円を超える部分は税込で「価格×3.3%+6.6万円」が上限です。不動産会社が自ら買主になる場合は媒介ではないため、仲介手数料はかかりません。ただし、ある会社が別の買取業者を紹介する形(媒介)なら手数料が生じます。誰が買主で、誰が媒介しているのかを書面で確認してください。

印紙税や抵当権抹消の登録免許税(不動産1個につき1,000円)はどちらでもかかります。内訳と、売却代金から控除できる場合があることは「オーバーローンで家が売れない?」で詳しく分解しています。どちらの形でも、「コンサルティング料」など別名目の費用が必要になる理屈はありません。

売った後の責任にも違いが出ることがあります。事業者が買主の場合、建物の不具合などについて売主の責任を負わない特約を結ぶことがあります。ただし特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができません(民法第572条)。雨漏りや設備の故障など、知っていることは隠さず伝えてください。

債権者の同意──買取でも「販売活動」を求められることがある

ここがいちばん誤解されている点です。残債が残る売却では、抵当権を抹消するかどうかは債権者が決めます。そして債権者は「その価格が妥当か」を確かめたうえで同意します。

公的な例として、住宅金融支援機構の任意売却の手続は、申出書の提出 → 価格査定 → 機構による売出価格の確認 → (専属)専任媒介契約の締結 → 販売活動(定期的に販売活動状況報告書を提出) → 抵当権抹消の審査 → 売買契約 → 決済、という順番です。機構は、確認していない価格で売り出して購入希望者を見つけても、抵当権抹消に応じられない場合があると明記しています。また同機構の任意売却パンフレットでは、初回の媒介契約から6か月を経過しても購入希望者が現れない場合などに、任意売却を断念して競売手続に進むことがあるとされています。

つまり、債権者によっては「市場に出して買主を探した」という過程そのものが同意の条件になっています。この場合、不動産会社が買主になる話を持ち込んでも、販売活動を飛ばすことはできません。民間の金融機関や保証会社・債権回収会社の運用はそれぞれ異なるため、届いた通知書の連絡先に、売却の進め方の条件を確認するのが先です。

つまずきやすい5つの点

  1. 査定額と買取の提示額を同じものとして比べる。媒介の査定額は「このくらいで売れると見込む額」で、その額で売れる保証ではありません。買取の提示額は「その会社が払う額」です。性質の違う数字だと分かったうえで並べてください
  2. 債権者の価格確認より先に話を進める。同意の前に売買契約を急がせる相手には注意してください。住宅金融支援機構は、承諾前に契約する場合は承諾を停止条件とする特約が必要としています
  3. 媒介で粘りすぎる。3か月ごとの更新のたびに残り時間は減ります。価格を下げるか、買取に切り替えるかの判断時期を、最初に決めておくと迷いません
  4. 共有名義や後順位の担保がある。共有者全員の協力、すべての担保権者の同意が必要になり、どちらの売り方でも時間がかかります
  5. 「この方法なら競売は止まる」と言い切る説明をうのみにする。止めるかどうかは債権者が申立てを取り下げるかどうかで決まり、売り方を選んだだけでは決まりません

相談先を分けてください

借金・残債の問題 → 弁護士・司法書士

売却後に残る債務の返済方法や減額の交渉、自己破産・個人再生の検討。債務そのものに関わる交渉や法的手続は弁護士・司法書士の業務です。不動産会社が代理することはできません。費用が心配な場合は、法テラスの民事法律扶助の対象になるか確認してください。専門家は日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会から探せます。

家の売却 → 宅地建物取引業者(不動産会社)
媒介での査定、買取の提示、債権者への申出と価格確認の段取り。任意売却の取扱い実績があるかを確認し、媒介と買取の両方の数字を出してもらうと比較しやすくなります。

今日できること

  1. 届いている通知を日付順に並べ、今の段階を確かめる。競売開始決定が届いていれば、事件番号と裁判所名を控えます
  2. 残債を今日時点の額で書き出す。遅延損害金は日数で増えます
  3. 債権者に「売却する場合の条件」を確認する。媒介契約や販売活動が求められるか、買主に制限があるか
  4. 媒介での査定額と、買取の提示額を1枚の紙に並べる。差額と、競売までの残り時間を書き添えると判断できます

よくある質問

Q. 任意売却と買取、結局どちらが得ですか?
時間が足りるなら、媒介で市場に出す任意売却の方が高く売れやすいとされます。時間が足りない場合、価格が下がっても販売活動の期間がかからない買取が残る選択肢になります。残り時間と価格差を並べて判断してください。

Q. 買取なら債権者の同意はいりませんか?
売却代金で残債を完済できない場合は、買取でも抵当権の抹消に債権者の同意が必要です。債権者によっては、一定期間の販売活動を経ることを条件にしています。

Q. 買取だと仲介手数料はかかりませんか?
不動産会社が自ら買主になる場合は媒介ではないため、仲介手数料はかかりません。別の会社を紹介される形なら媒介にあたり、上限の範囲で手数料が生じます。

Q. 競売開始決定の後でも買取はできますか?
債権者が売却に同意し、競売の申立てを取り下げれば可能です。入札があった後は入札した人の同意が必要になるため、実務上の区切りは開札期日の前日とされています。間に合うかは残り時間と債権者の条件によります。

Q. 売却した後も住み続ける方法はありますか?
買主との間で賃貸借の契約を結べる場合もありますが、条件は買主と債権者の判断によります。家賃を払い続けられるかも含めて、慎重に検討してください。

この記事について:滞納の味方 編集部(城久株式会社/宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号)が作成しています。不動産の実務に関する記述は、当社の宅地建物取引士が確認しています。

債務整理・債権者との交渉は弁護士・司法書士にご相談ください。 最終更新日:2026年10月21日

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