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先に結論をお伝えします。
- 競売開始決定通知は、裁判所があなたの家を差し押さえたことを知らせる書面です。通知が届いた時点で、差押えの効力はすでに生じています(民事執行法第45条・第46条)
- それでも住み続けること自体はできます。所有権が移るのは落札者が代金を納めた時点です(同法第79条)
- 開始決定から入札までの期間には、公的な一律の目安がありません。自分の期限は、書面と裁判所への確認でしか分かりません
- 住宅ローンの競売を止める方法は、実質的に「債権者が申立てを取り下げること」ひとつです。債権者が待つと口頭で言っただけでは、手続は止まりません
- 今週やることは、①事件番号と裁判所名の控え ②残債額の確認 ③家の想定売却額の確認、の3つです
裁判所から届く「担保不動産競売開始決定」という書面は、これまでの督促状や催告書とは性質が違います。金融機関や保証会社からの請求ではなく、裁判所が手続を始めたという通知だからです。
この記事では、通知が届いた時点で法律上どこまで進んでいるのか、この先の日程のうち何が決まっていて何が決まっていないのか、そして止める方法が現実に残っているのかを、条文と裁判所の公表資料にそって整理します。全体の流れは柱記事「住宅ローンを滞納するとどうなる?」に、ひとつ手前の段階は「代位弁済通知が届いたら?」にまとめています。
競売開始決定通知は何を知らせているのか
執行裁判所は、競売の手続を開始するときに開始決定を出し、その決定のなかで債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言します。そしてこの開始決定は、債務者に送達しなければならないと定められています(民事執行法第45条第1項・第2項)。手元に届いた書面は、この送達にあたります。
差押えの効力が生じるのは、開始決定が債務者に送達された時です。ただし、差押えの登記が送達より先にされたときは、登記がされた時に効力が生じます(同法第46条第1項)。登記簿を取れば「差押」の記載と日付が確認できます。
住宅ローンの場合、この手続は抵当権にもとづく担保不動産競売です(同法第180条第1号、第181条第1項第1号)。判決をとってから行う強制競売とは根拠が違い、後で触れるとおり手続を止める方法も違います。裁判所の案内は「担保不動産競売」のページにあります。
差し押さえられても、住み続けることはできます
誤解の多いところです。民事執行法第46条第2項は、「差押えは、債務者が通常の用法に従つて不動産を使用し、又は収益することを妨げない」と定めています。所有権が移るのは落札者が代金を納付した時点であり(同法第79条)、それまでは固定資産税やマンションの管理費・修繕積立金も、引き続き所有者であるあなたに請求されます。
一方で、差押え後に家を売ったり貸したりしても、その内容を落札者に主張することはできません。任意売却をするなら、競売の申立て自体を取り下げてもらう必要があるのはこのためです。
返済が苦しくなった家の売却は、当サイト運営の城久株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号/取引態様:当社が買主となる売買(直接買取)または媒介)がご相談をお受けしています。事情のある家も、まずご相談ください。売却について相談する(お電話 03-6824-4499/受付 10:00〜18:00)
この先の日程──決まっていることと、決まっていないこと
裁判所の公表資料を確認しても、開始決定から入札までの一律の目安は示されていません。物件の調査にかかる時間や事件数によって差が出るためです。一方で、入札が近づいてからの日程には、公表された基準があります。
| 段階 | 内容 | 期間の扱い |
|---|---|---|
| 開始決定・差押え | 通知の送達。差押登記 | いま、ここ |
| 現況調査・評価 | 執行官が室内を調査、評価人が価格を算定 | 一律の目安なし(事件ごとに差) |
| 公告 | 入札期間・開札期日・売却基準価額などを公示 | 入札開始日の2週間前まで |
| 三点セットの閲覧 | 物件明細書・現況調査報告書・評価書を公開 | 東京地裁では入札開始の15日前から |
| 期間入札 | 買受希望者が入札書を提出 | 東京地裁では通常8日間 |
| 開札期日 | 最高価買受申出人が決まる | 実務上の最終期限はこの前日 |
| 売却決定期日 | 売却の許可・不許可の言渡し(同法第69条) | 裁判所により開札から1〜3週間程度 |
| 代金納付 | 納付した時に所有権が移る(同法第78条・第79条) | 東京地裁では許可決定確定から約1か月 |
| 引渡命令 | 買受人の申立てで明渡しを命じる決定 | 代金納付から6か月以内に申立て可(同法第83条第2項) |
※出典は東京地方裁判所民事執行センターの案内とBITの用語解説です。裁判所によって運用が異なります。ご自身の日程は、通知書の事件番号をもとに担当の裁判所にご確認ください。
この表から分かるのは、公告が出た時点で動き始めても遅いということです。そこから買主を探して債権者の承諾を得るのは現実的ではありません。まとまった時間が残っているのは、通知が届いたいまの段階です。
競売を止める方法は、実質ひとつしかありません
判決などにもとづく強制執行であれば、債権者が弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書を出せば手続は止まります(民事執行法第39条第1項第8号。ただし2回まで、通算6か月まで)。
ところが住宅ローンの競売は担保不動産競売です。停止事由を定める同法第183条は停止できる場合を限定しており、債権者側の書面については「裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本」を要求しています。つまり、保証会社や債権回収会社が「待ちます」と口頭で言った、あるいは普通の手紙で伝えてきた、というだけでは手続は止まりません。
現実に競売が終わるのは、次のいずれかです
① 債権者が申立てを取り下げる(任意売却が成立する場合がこれにあたります)
② 債務が全額弁済され、抵当権の登記が抹消される(同法第183条第1項第1号)
③ 裁判所が手続を取り消す(「無剰余」の場合など。同法第63条)
③は裁判所の判断で、こちらから選べるものではありません。取り消されても債務そのものは残ります。自分の意思で選べるのは、実質的に①だけです。
そして①にも期限があります。買受けの申出があった後に申立てを取り下げるには、最高価買受申出人または買受人の同意が必要です(同法第76条第1項)。期間入札では開札まで入札者が確定しないため、実務上、他人の同意なしに取り下げられるのは開札期日の前日までとされています。これは法律上の限界であって、実務の余裕ではありません。債権者側の審査や書類作成の時間を考えれば、動き出す期限はもっと手前です。
競売になった場合の価格と、残る負担
競売では、執行裁判所が評価人の評価にもとづいて売却基準価額を定め、入札できる下限である買受可能価額は、そこから2割を差し引いた額になります(民事執行法第60条第1項・第3項)。制度上、低い水準から入札が始まる仕組みです。
費用の面では、執行費用は債務者の負担とされ(同法第42条第1項)、売却代金は執行費用を含めた順位にしたがって配当されます(同法第85条)。退去のための費用が所有者に優先して渡される仕組みは、法律上ありません。
これに対して任意売却では、債権者の運用によって費用の扱いが変わります。住宅金融支援機構は、所定の手続に協力した場合に「売却代金から不動産仲介手数料、抹消登記費用等を控除できる場合があり」、残債務の状況によっては延滞損害金の減額相談に応じられる場合があると案内しています。手続は、申出書 → 価格査定 → 機構による売出価格の確認 → 媒介契約 → 販売活動 → 抵当権抹消の応諾審査 → 売買契約 → 決済の順です。売出価格の確認より先に買主を見つけても、抵当権抹消に応じてもらえない場合があります。順番を飛ばせません。
費用の内訳は「オーバーローンで家が売れない?」で仲介手数料の上限や登記費用まで分解しています。残債が売却額を上回る場合は、あわせてお読みください。
開始決定の後に起きる、生活上の変化
手続とは別に、生活面で先に知っておきたいことが2つあります。
執行官の現況調査があります。執行裁判所は執行官に、不動産の形状や占有関係の調査を命じなければなりません(同法第57条第1項)。執行官は不動産に立ち入り、質問をし、文書の提示を求めることができ(同条第2項)、必要があるときは閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることもできます(同条第3項)。留守にしていればやり過ごせる、という性質のものではありません。
物件の情報が公開されます。裁判所書記官は物件明細書を作成し、一般の閲覧に供しなければなりません(同法第62条)。現況調査報告書・評価書とあわせた「三点セット」は裁判所で閲覧できるほか、BIT(不動産競売物件情報サイト)でも公開されます。住所や間取り、室内の写真が誰でも見られる状態になるため、近隣に知られるきっかけになり得ます。これを避けたい場合、公開前に手続が終わっている必要があります。
相談先を分けてください
この段階でも、「借金の問題」と「家の問題」は別の問題です。相談先も分かれます。
借金の問題 → 弁護士・司法書士
請求額に疑問がある、返済の方法について債権者と話し合いたい、自己破産や個人再生も含めて検討したい。債務そのものに関わる交渉や法的手続は、弁護士・司法書士の業務です。不動産会社が代理することはできません。収入や資産が一定の基準以下であれば、法テラスの民事法律扶助で無料の法律相談を利用できる場合があります。専門家は日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会から探せます。
家の問題 → 宅地建物取引業者(不動産会社)
いくらで売れるか、残り時間のなかで決済まで届くか。これは不動産会社の仕事です。任意売却の取扱い実績があるかを確認してください。
このサイトでは、個別の売却のご相談はお受けしていません。家の売却は不動産会社に、借金そのものについては弁護士・司法書士にご相談ください。
今週できること
- 通知書の「事件番号」と「裁判所名」を控える。日程を問い合わせるときも、専門家に相談するときも、これがないと話が進みません
- 登記簿を取得して「差押」の記載と日付を確認する。差押登記の日付は、効力が生じた時点の手がかりになります
- 残債の総額を確認する。元金・利息に加え、遅延損害金が上乗せされています。保証会社や債権回収会社からの書面に記載があります
- 家の想定売却額を把握する。残債との差で、選べる道が変わります
- 借金について不安があれば、弁護士・司法書士に相談する。法テラスの利用条件に当てはまるかもあわせて確認してください
1から4は数日あれば揃います。この4つが揃ってはじめて、任意売却が間に合うのかを判断できます。判断材料がないまま時間だけが過ぎるのが、この段階でいちばん避けたい状態です。
よくある質問
Q. 競売開始決定通知が届いたら、すぐ家を出なければいけませんか?
いいえ。差押えがあっても、通常の使い方で住み続けることは法律上認められています(民事執行法第46条第2項)。所有権が移るのは落札者が代金を納付した時点です(同法第79条)。
Q. この段階でも任意売却はできますか?
制度としては可能です。債権者が競売の申立てを取り下げることで成立します。ただし、買受けの申出があった後の取下げには最高価買受申出人などの同意が必要になるため(同法第76条第1項)、実務上の期限は開札期日の前日とされています。間に合うかどうかは残り時間と物件の条件によります。
Q. 債権者が「少し待つ」と言ってくれました。競売は止まりますか?
担保不動産競売では、停止できる場合が法律で限定されています(同法第183条)。債権者側の書面については「裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本」が必要とされており、口頭の約束や通常の手紙では手続は止まりません。実際に止まるのは、債権者が申立てを取り下げたときです。書面の内容と手続の扱いは、弁護士・司法書士に確認してください。
Q. 競売の日程は、いつ分かりますか?
入札期間と開札期日は公告で示され、公告は入札期間が始まる日の2週間前までに裁判所の掲示場などに掲示されます。ただし公告を待ってから動くのでは遅すぎます。事件番号を手に、担当の裁判所に進み具合を確認するほうが確実です。
Q. 競売が取り消されることはありますか?
あります。買受可能価額が手続費用や優先債権の見込額に満たない場合などです(同法第63条)。ただし裁判所の判断であり、取り消されても債務は残ります。
Q. 競売になると、信用情報にはどう記録されますか?
登録は競売そのものではなく、長期の延滞や代位弁済といった事実にもとづいて行われます。CICの場合、クレジット情報の保有期間は「契約期間中および契約終了後5年間」とされています。機関ごとに扱いが異なるため、JICCを含め、開示請求をして確認するのが確実です。
この記事について:滞納の味方 編集部(城久株式会社/宅地建物取引業 東京都知事(1)第114307号)が作成しています。不動産の実務に関する記述は、当社の宅地建物取引士が確認しています。
債務整理・債権者との交渉は弁護士・司法書士にご相談ください。 最終更新日:2026年10月13日
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